「愛怨峡」における映画的表現の問題

宮本百合子

「愛怨峡」における映画的表現の問題書籍情報

底本:「宮本百合子全集 第十一巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年1月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
親本:「宮本百合子全集 第七巻」河出書房
   1951(昭和26)年7月発行
初出:「帝国大学新聞」
   1937(昭和12)年6月28日号
入力:柴田卓治
校正:米田進

「愛怨峡」における映画的表現の問題 8

宮本百合子

おふみと芳太郎とが並んで懸合いをやる。文句はあれで結構、身ぶりもあれで結構、おふみの舞台面もあれでよいとして、もしその間におふみと芳太郎とが万歳をやりながら互に互の眼を見合わせるその眼、一刹那の情感ある真面目ささえもっと内容的に雄弁につかまれ活かされたら、どんなに監督溝口が全篇をそれで潤わそうとしているペソスが湧いたか知れないと思う。